母材を溶かさずに高品質な接合を行う方法に固相拡散接合があります。ただし、固相拡散接合にもメリット・デメリットがあり、「固相拡散接合の特徴を知りたい」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、固相拡散接合の特徴やメリット・デメリット、他の接合方法との違いなどについて解説します。
固相拡散接合とは
固相拡散接合とは、金属同士を溶融させず、固体のまま接合する技術の1つです。一般的な溶接では金属を高温で溶かしたのちに凝固させて接合しますが、固相拡散接合では金属を溶融点以下の温度まで加熱し、圧力を加えることで原子同士を拡散・結合させます。母材を溶かさないため、溶融溶接に比べて接合界面が極めて高品質に仕上がる点が大きな特徴です。
金属材料を加熱すると、固体であっても表面の原子が活性化し、互いの原子が移動しやすくなります。固相拡散接合は、この性質を利用し、接合面を密着させて拡散を促すことで、母材同士が一体化する強固な接合を実現します。さらに、加熱温度は材料の溶融点より低いため、精密部品の接合に適した方法です。
固相接合のメリット・デメリット
固相接合には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題や注意点も存在します。
固相接合のメリット
固相接合の主なメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
- 溶融を伴わないため金属組織が均一である
- 異種金属の接合が可能
- 接合界面の品質が高い
- ろう材不要で純度の高い接合が可能
まず、固相接合は材料を溶かさないため、溶融溶接で発生しがちな熱ひずみ・変形・溶接割れなどの欠陥がほとんど発生しません。精密部品の接合や寸法精度が求められる用途で大きなメリットです。
また、溶融溶接では、金属同士の溶融特性が大きく異なる場合、割れや脆化が生じやすいため適用が難しいケースがあります。固相接合は溶かさずに原子拡散で結合させるため、異種金属でも接合しやすい点が特徴です。アルミと銅、チタンとステンレスなど、異素材間の接合に利用されています。
接合界面の品質が高い点もポイントです。固相拡散接合では、接合面で原子が均一に拡散するため、界面が極めて平滑・均質になります。その結果、強度や気密性が高く、微細流路や電子デバイスなど、構造上シビアな用途で高い性能を発揮します。
さらに、固相接合はろう付けとは異なり、接合に中間材を必要としないため、母材の特性を損なわずに結合できる点もメリットです。
固相接合のデメリット
固相接合には多くのメリットがある一方、いくつかデメリットも存在します。ここでは、主なデメリットとして以下の3点について解説します。
- 接合に時間がかかる
- 設備コストが高い
- 接合面の前処理が重要
まず、固相拡散接合は原子の拡散を利用するため、高温に保持する時間が比較的長くなる傾向があります。大量生産ラインでは効率を考慮する必要がある点には要注意です。また、高精度な加圧機構、高温炉、真空装置などが必要なため、設備投資が高額になるケースがあります。
さらに、固相接合では接合界面の密着が性能に直結するため、表面の清浄度・平滑度が重要です。汚れや酸化膜が残っていると、十分な強度を得られません。
他の接合方法との違い
ここでは、固相接合と液相接合・ろう付・接着接合の違いについて解説します。4つの接合方法の主な違いは、以下の表のとおりです。
| 接合方式 | 接合温度 | 接合の仕組み | 接合部の強度 | 異種金属の接合 | 設備コスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 固相接合 | 材料の溶融点以下 | 加圧+加熱により原子拡散で接合 | 非常に高い | 可能 | 高 |
| 液相接合(溶接) | 金属を溶融させる | 溶融・凝固による接合 | 高いが凝固欠陥の可能性あり | 条件付きで可能 | 中 |
| ろう付 | ろう材の融点 | ろう材が溶けて濡れ広がり接合 | 中程度 | 得意 | 中 |
| 接着接合 | 常温〜加熱 | 接着剤の硬化で接合 | 部分的 | 得意 | 非常に低い |
まず、固相接合は母材を溶かさずに接合するため、液相接合(溶接)のような凝固欠陥や溶融による組織変化が発生しません。高温に弱い材料や異種金属の組み合わせに対しても比較的適用しやすく、接合部の品質が安定しやすい点が強みです。
ろう付は、母材を溶かさずに接合する点では固相接合と共通しますが、ろう材を間に入れて接合する点が異なります。ろう材が溶融することで接合が進むため、比較的低温で広い面積を接合できる反面、ろう材の機械的性質が母材より劣る場合、接合強度が制約されやすく、耐熱性・耐食性もろう材の種類に左右される点には注意が必要です。固相接合の場合は異物が入らないため、母材本来の性質を活かした高い接合強度・耐熱性を得られます。
接着接合は、ろう付よりさらに低温で、樹脂系接着剤を利用して接合する方法です。熱影響をほとんど与えず、複雑形状でも簡単に接合できますが、接着剤自体が経年劣化したり耐熱性が低かったりするため、強度や耐久性の面では金属同士の直接接合に劣ります。また、剥離や湿度による影響を受けやすいという点も課題です。
固相接合の代表的な方法
固相接合にはさまざまな方式があり、目的・材料・形状に応じて使い分けられています。ここでは、代表的な方法として以下の3つについて解説します。
- 拡散接合
- 摩擦攪拌接合
- 摩擦圧接
拡散接合は、固相接合の代表格であり、高温・高圧・時間保持によって原子拡散を促し接合を行う方式です。一般的に、真空中あるいは不活性ガス中で行われます。ホットプレス(拡散接合)については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
摩擦攪拌接合は、回転ツールによる摩擦熱で金属を可塑化させ、攪拌しながら接合する方式です。アルミやマグネシウムなど軽金属の接合に多く採用されています。熱影響が少なく、溶接欠陥が出にくい方式です。
摩擦圧接は、部材同士を回転させながら押し付け、摩擦熱で表面を塑性化させて接合します。異種金属の棒材接合に適しており、自動車部品で多く採用されている方法です。
まとめ
本記事では、固相接合について解説しました。固相接合は、金属を溶融させずに母材同士を原子レベルで結合させる接合技術です。精密性・高強度・高気密性を求められる分野で重要な役割を果たしています。
一方で、設備投資や接合に必要な時間、表面前処理の重要性など、他方式にはない課題もあります。しかし、それを上回る高品質な接合が求められる場面では、固相拡散接合は有効な選択肢です。
金属技研では、ホットプレス(拡散接合)をはじめ、さまざまな接合技術を取り扱っています。固相接合を含む金属の接合方法でお悩みの方は、ぜひ以下のページよりお気軽にお問合せください。