リベット接合とは、リベットと呼ばれる金属製の部品を使って材料を接合する方法です。工法がシンプルで接合強度が高いことから、以前は多くの分野で利用されていました。
この記事では、リベット接合とはどんな接合方法なのか、メリットやデメリットとあわせて詳しく解説します。具体的な接合方法や活用事例も紹介するので、リベット接合の基本的な知識を学びたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
リベット接合とは
リベット接合とは、リベット(鋲)と呼ばれる円柱状の金属製の棒を使って、2枚以上の金属や材料を機械的に接合する方法です。リベットを材料に通し、先端をつぶして固定することで部材同士を締結します。この方法は、溶接や接着のように熱や薬剤を使わない機械的接合法の一種で、特に強度や耐久性を求められる場面で活用されてきました。
リベットは、古くから船や橋、航空機といった構造物に使われてきた実績があり、現代でも特定の用途において使用されています。とくに高温や振動が加わる環境、または溶接が困難な異種材料の接合においてはリベット接合が有効なケースもあります。
リベット接合のメリット・デメリット
リベット接合のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
リベット接合のメリット
リベット接合の主なメリットは、以下の4点です。
作業が簡単
リベット接合は、接合方法の中でも比較的作業が簡単な工法です。接合したい部材に穴を開け、リベットを通し、先端をハンマーやリベッターなどの工具でつぶして固定するだけで、確実に接合することができます。
溶接のように高温を発生させる設備や、接着のように硬化時間を管理する必要がないため、短時間で作業を完了できます。とくにポップリベットを用いた方法では、片側からだけで接合できるため、作業の自由度が高く、DIYや修理作業でも扱いやすいのが魅力です。
接合部が緩みにくい
リベット接合は、一度かしめると外れにくく、振動や衝撃に対して高い耐性を持ちます。ネジやボルトのようにねじ込み構造ではないため、経年による緩みが少なく、メンテナンス頻度も軽減可能です。
とくに自動車や航空機など、常に振動や衝撃に晒される製品では、リベットのように物理的に固定される接合方式が適しているケースもあります。また、複数箇所に分散して配置することで、全体の荷重をバランスよく受け止め、接合部への局所的な負荷を避けることが可能です。
母材を損傷させにくい
リベット接合では高温や薬品を使用しないため、母材に対する物理的・化学的なダメージが少ないというメリットがあります。溶接のように熱による歪みや金属組織の変質が発生せず、接着のように薬剤による腐食リスクもありません。
穴を開ける以外の加工がほぼ不要で、母材の表面処理や内部特性を維持したまま接合できるため、熱に弱い素材や表面処理が施された材料に対しても使用できます。また、異種金属の接合にも対応しやすく、ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)を回避しやすい点もメリットです。
分解がしやすい
リベットは一度固定すると外れにくい構造ですが、必要に応じてドリルやカッターでリベット頭を削ることで比較的簡単に分解が可能です。ねじのように繰り返し使用することはできませんが、破壊を前提にした取り外しができるため、組み立て後の調整や交換にも対応できます。
とくにポップリベットなど一部のリベット製品では、専用工具を使えば簡単に取り外すことができ、設備の再構成や保守作業の際にも役立ちます。また、接着のように剥がす際に母材を傷つけることが少ないため、再加工や修復を見越した設計にも適しています。
リベット接合のデメリット
リベット接合の主なデメリットは以下の5点です。
見た目が悪くなる
リベット接合は、接合部にリベットの頭部やかしめ部分が表出するため、外観上の美しさが損なわれることがあります。製品の表面に凹凸ができることで、デザイン性が求められる製品や、仕上がりの均一性が重要な用途では注意が必要です。
また、リベットの打ち込みにムラがあると、見た目のバラつきが生じやすく、製品の品質を下げる要因にもなります。目立たない位置にリベットを配置したり、装飾キャップを活用したりといった工夫が求められるケースもあるでしょう。
重量が重くなる
リベットは金属製であるため、数が増えると製品の重量が増加します。とくに大型構造物や、接合点が数百〜数千に及ぶようなケースでは、リベットだけで数キログラムに達する場合もあるでしょう。
現代は軽量化が求められる製品が多く、航空機やモバイル機器などではリベット接合が敬遠されるケースもあります。さらに、補強を目的としてリベットを多用すると、設計時に予想以上に重量が増え、取り回しや輸送の効率に悪影響を及ぼす恐れもあるため、使用箇所の最適化が不可欠です。
母材によっては加工できない
リベット接合には、母材に穴を開けて圧着するという前提があるため、すべての材料に適用できるわけではありません。たとえば、非常に硬い材料や焼入れ鋼などは、穴開け加工自体が困難で、リベット挿入後のかしめ作業でも割れや破損が生じることがあるため要注意です。
ガラスやセラミック、極端に薄い金属板などは、かしめ時の圧力で破損する可能性が高く、接合には向いていません。このように、材料の種類や厚みによってはリベット接合が不適なケースがあるため、工法の選定時には素材特性を十分に考慮する必要があります。
曲面や複雑な形状には不向き
リベット接合は、基本的に平面同士の部材を密着させて固定することを前提とした工法です。そのため、丸みのある曲面や、湾曲した形状、凹凸の多い部品などに対しては穴開けや打ち込みが難しくなるため、適用が難しい場合があります。
工具の接触角度や圧力のかけ方に制限が生じるため、無理にかしめるとリベットが斜めに潰れたり、母材が変形してしまうリスクにも注意が必要です。こうした複雑な形状には、接着剤や溶接、ボルトナットなど柔軟性のある工法の方が適しています。
作業音や振動が大きい
リベット接合では、リベットのかしめ作業にハンマーやリベッターを用いるため、作業中に大きな打音や振動が発生する点がデメリットです。とくに鉄やステンレスのような硬い金属同士を接合する場合、その音量はかなり大きく、作業環境によっては騒音対策や防振対策が必要となります。
集合住宅や静音が求められる現場、あるいは夜間作業には不向きな工法であり、周囲への配慮が求められます。また、連続作業を行う作業者の身体にも負担がかかりやすい点は注意が必要です。
リベット接合の接合方法
リベット接合の基本的な接合方法は、以下のとおりです。
<リベット接合の基本的な手順>
- 母材を重ねて穴を開ける
- リベットを穴に入れる
- リベットの余った先端を工具でつぶす
母材を重ねて穴を開ける
まず、接合する母材(板材など)を重ね合わせ、リベットを通すための穴をドリルやポンチで加工します。穴径は、使用するリベットの直径に合わせて設計し、極端にきつすぎず、緩すぎない調整が必要です。
穴位置がずれていると、リベットがうまく挿入できなかったり、接合部に負荷がかかったりして、強度に悪影響を与える場合があります。位置合わせには細心の注意が必要です。
リベットを穴に入れる
穴を開けた後は、リベットをそのまま穴に挿入しましょう。リベットの材質はアルミ・鉄・ステンレスなどが一般的で、接合する素材や用途に応じて使い分けられます。リベットには頭部(フランジ側)と先端(打ち潰す側)があり、頭部が表面側、先端が裏側になるように挿入してください。
このとき、部材同士に浮きや隙間がないように密着させた状態で挿入することが重要です。隙間があると、打ち込み時に材料が変形したり、接合後の強度にムラが出る原因になるため注意しましょう。
リベットの余った先端を工具でつぶす
最後に、挿入したリベットの先端をハンマーやリベッター、圧着工具などでつぶし、固定します。この工程により、リベットの両端が広がり、部材がしっかりと締結されます。
手作業では、支持台(アンビル)に部材を乗せ、ハンマーで何度か打撃を加えることで成形可能です。エアリベッターなどのツールを使えば、より短時間で安定した締結ができます。
つぶした部分が丸く広がり、しっかり密着しているかを確認することで、締結状態を評価できます。打ち込み不足や成形不良があると、使用中に緩みや脱落が起こるリスクがあるため、目視検査と触診による確認を必ず実施してください。
リベット接合の活用事例
リベット接合の活用事例を以下の3つの用途別に紹介します。
- 建築・橋梁構造物
- 航空機や鉄道車両
- 自動車やバイクの一部部品
建築・橋梁構造物
鉄橋や鉄骨建築では、かつてリベットが主要な接合手段でした。現在では高強度ボルトや溶接に置き換えられることが多いものの、文化財の修復やレトロな意匠の再現では、今でもリベット接合が選定されるケースもあります。
航空機や鉄道車両
アルミニウムや軽合金が使用される航空機の外装では、熱による歪みを避ける目的でリベット接合が多用されてきました。軽量かつ確実な固定が求められる鉄道車両のパネル接合にも用いられています。
しかし、橋などと同様に溶接技術の向上などの影響で、航空機などにリベット接合が用いられるケースは少なくなってきています。
自動車やバイクの一部部品
エンジンカバーや補強部材など、溶接しづらい部位や高振動部の固定にリベットが使われるケースがあります。とくにレトロカーの修理や、モータースポーツでの補強作業では今でもリベット接合が採用される場合もあります。
まとめ
本記事では、リベット接合とは何かを、メリットやデメリットとあわせて解説しました。リベット接合は、接合部の強度が高く、熱や薬剤を使わずに材料を接合できる点がメリットです。一方、リベット分の重量が増加する点や、母材の種類・形状によっては採用が難しい点には注意する必要があります。
リベット接合は母材を重ねて穴をあけ、リベットを挿入してかしめるというシンプルな手順で材料を接合できます。以前は、橋や航空機などさまざまなシーンで活用されていましたが、現在は溶接技術などの向上により、用途は限定的になりつつある工法です。
金属技研では、ろう付けやホットプレス(拡散結合)、溶接などさまざまな接合技術を提供しています。接合に関してお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください。
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