レーザー溶接とは?使用例やメリット・デメリットを解説

レーザー溶接とは?使用例やメリット・デメリットを解説

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レーザー溶接はレーザー光を接合部に集中させて局所的に加熱し、材料同士を接合する溶接方式です。精度の高い溶接が可能で、溶接部分もきれいに仕上がることから、精密機器部品の接合などにも使われます。

この記事では、レーザー溶接とはどんな技術なのか、特徴や使用例、メリット・デメリットなどを解説します。レーザー溶接技術について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

レーザー溶接とは

レーザー溶接とは、高出力のレーザー光を金属などの接合部に集中的に照射し、局所的に加熱・溶融して接合する溶接方法です。レーザー(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)は、波長のそろった光を一点に集光でき、高いエネルギー密度を持ちます。

レーザー溶接では、母材表面に集光されたレーザー光が金属に吸収され、瞬時に高温となることで溶融池が形成されます。これが冷却・凝固すると、部材同士が接合されます。溶融させる深さや範囲は、レーザーの出力・照射時間・集光条件によって精密に制御可能です。

使用されるレーザーには、CO2レーザー・YAGレーザー・ファイバーレーザーなどがあり、接合対象の材質や精度要件に応じて選定されます。また、レーザー照射は非接触で行われるため、工具摩耗がなく、微細部位にも適用可能です。

レーザー溶接の特徴

レーザー溶接の主な特徴としては、以下の4点が挙げられます。

局所加熱により精密で歪みの少ない溶接が可能

レーザーは狭い範囲にエネルギーを集中できるため、局所加熱によりほかの領域への熱影響を最小限に抑えられます。周囲に歪みや変形を与えにくく、熱による素材特性の劣化も抑制可能です。

また、ビーム径や出力は精密に制御可能で、数ミクロン単位の微細溶接にも対応できます。そのため、薄板部品や精密機器の接合でも安定して溶接できるのが特徴です。

異種金属の接合にも対応しやすい

レーザー溶接は、溶接対象の金属表面のみを短時間で溶融させます。そのため、熱膨張率の異なる材料同士でも割れが生じにくいのが特徴です。たとえば、銅とアルミニウム、鉄とニッケルなど、通常の溶接では難しい異種金属の接合にも適用できます。

目的に応じた溶接方式を選べる

レーザー溶接には、目的や部品形状に応じて複数の溶接方式があります。

ごく短時間で一点を接合する「スポット溶接」は、電子部品やバッテリー端子など微細部品の接合に最適です。一方、トーチを連続的に動かしながら溶接する「シーム溶接」は、密閉性や外観の美しさが求められるケースに適しています。

また、高出力レーザーによって深く溶け込ませる「キーホール型溶接」は厚板や高強度部材の接合に用いられ、熱伝導によって表層だけを溶かす「熱伝導型溶接」は、薄板や熱に弱い部材に適しています。こうした方式を柔軟に使い分けられる点も、レーザー溶接の特徴です。

装置の小型化・自動化が容易

レーザー溶接は、装置の構造がシンプルで、電子ビーム溶接のような真空チャンバーを必要としません。そのため、レーザー溶接機は設置スペースが小さく、省スペース化が求められる製造現場でも導入しやすいといえるでしょう。

さらに、レーザーは光学ファイバーで伝送できるため、ロボットなどとも比較的容易に連携できます。溶接位置やパラメータはコンピュータ制御で細かく調整可能であり、複雑な工程でも完全自動化による連続運転が可能です。

レーザー溶接の使用例

レーザー溶接の使用例を3つ紹介します。

電気自動車(EV)バッテリーの製造

レーザー溶接は、EVバッテリーの製造において不可欠な技術です。とくにバッテリーセルとバスバーの接合では、異なる金属材料の高精度かつ高速な溶接が求められます。

レーザー溶接は、非接触でエネルギーを集中させられるため、熱影響を最小限に抑えつつ、強固な接合が可能です。これにより、電気自動車用バッテリーの生産効率も高まります。さらに、レーザー溶接は自動化が容易であり、大量生産にも対応可能です。

電子部品の微細溶接

スマートフォンやタブレットなどの電子機器では、微細な部品の高精度な接合が求められます。レーザー溶接は、極小のスポットサイズでエネルギーを集中させられるため、微細な部品の溶接に適しています。

たとえば、コネクタやカメラモジュール、振動モーターなどの部品の接合には、レーザー溶接が利用されています。また、非接触での溶接が可能なため、部品への物理的なストレスを抑えることが可能です。これにより、製品の品質と耐久性の向上が期待できます。

自動車ボディの溶接

自動車の車体製造においても、レーザー溶接は重要な役割を果たしています。とくに、異なる厚さや材質の鋼板を接合する際に、レーザー溶接による高い接合強度ときれいな仕上がりが役立ちます。

また、レーザー溶接は高速での加工が可能であり、生産ラインの効率化が可能です。さらに、ロボットアームとの組み合わせにより、複雑な形状や狭いスペースでの溶接も容易に行えます。

レーザー溶接のメリット・デメリット

レーザー溶接のメリットとデメリットを紹介します。

レーザー溶接のメリット

レーザー溶接の主なメリットは、以下の3つです。

変形を抑えつつ十分な強度の接合ができる

レーザー溶接は、狭い範囲に高エネルギーを集中できるため、母材全体への熱の影響を最小限に抑えられます。これにより、溶接による熱変形や歪みが起こりにくく、精密な製品にも対応可能です。

キーホール型などを用いれば十分な溶け込みと接合強度も確保できるため、軽量化や高剛性が求められる製品にも活用しやすいでしょう。

工数が削減でき生産性の向上が期待できる

レーザー溶接は熱歪みが小さいため、アーク溶接で必要となる歪み取り作業を省略できます。また、基本的に母材同士を直接接合するため、肉盛りが不要で、研磨工程も省略可能です。

さらに、加工条件を最適化することで溶接焼けも抑えられれば、電解研磨の工程を削減できます。こうした後処理工程の省略は、生産性向上だけでなく、製造コストの低減にも大きく貢献するでしょう。

条件管理がしやすく自動化に適している

レーザー溶接は出力・波形・照射時間などをデジタル制御できるため、加工条件の数値管理とトレーサビリティの確保が容易です。同じ条件で何度でも再現できるため、品質のばらつきが少なく、品質保証もしやすくなります。

また、光ファイバー伝送によりロボットとの相性もよく、フルオートメーション化にも対応できる点が大きな利点です。

レーザー溶接のデメリット

レーザー溶接のデメリットとしては、主に以下の4点が挙げられます。

安全対策が必須

レーザー溶接では、高出力のレーザー光を扱うため、目や皮膚への影響を防ぐ安全対策が欠かせません。レーザー遮蔽カバーの設置・ゴーグルの着用・インターロック装置の導入などが必要となり、作業者や設備周辺の安全管理コストがかかります。また、取扱者にはある程度の専門知識も必要です。

接合面に隙間があると溶接不良が起きやすい

レーザー溶接は精密なビームを使うため、接合面に隙間や不均一があると光が反射・逸脱し、十分に熱が伝わらず、溶接不良を引き起こす可能性があります。

とくに薄板や異種材の接合では、事前に正確な位置合わせやギャップ管理が重要となります。溶接前の加工精度が品質に大きく影響する点には注意しましょう。

表面状態に影響を受けやすい

レーザー溶接では、金属表面でのレーザー光の反射や吸収特性が加工精度に大きく影響します。汚れ・油分・酸化皮膜などが付着していると、レーザーが十分に吸収されず、溶け込み不足や欠陥の原因となります。

とくに高反射材(アルミや銅)では反射率が高く、表面処理が不十分だと照射エネルギーの多くが反射され、溶接が安定的に行えません。そのため、表面の前処理の徹底が重要な工程となります。

導入コストが高い

レーザー溶接を導入するには、高出力レーザー発振器・光学系・制御装置・冷却設備など、多くの高性能機器が必要です。そのため、初期導入コストはアーク溶接などと比べて高額になる傾向があります。

まとめ

本記事では、レーザー溶接について解説しました。レーザー溶接は、局所加熱が可能な点や出力を制御しやすい点などから、電気自動車のバッテリー・電子部品などさまざまな用途に活用されています。設備コストや安全対策が必要にはなるものの、精度が必要な溶接シーンではとくに効果を発揮するでしょう。

金属技研は、さまざまな溶接方式に対応しており、レーザー溶接機も所有しております。レーザー溶接に関するお困りごとがあれば、ぜひ当社にお問い合わせください。

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監修者情報

金属技研株式会社

航空機や発電用タービンなど、厳しい使用環境に耐えられる信頼度の高い金属部品をご提供。日々新しい手法や仕組み、材料の創出に取り組んでいます。
また、最新の機械設備の拡充など積極的な設備投資にも力を入れています。

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