金属積層造形には複数の造形方式があり、用途や部品サイズ、求める精度によって適切な造形方法を選択する必要があります。なかでもDED方式は、金属材料を直接供給しながら造形する方式であり、大型部品の製作や金型・機械部品の補修、肉盛りなどに活用される造形方式です。
一方で、「DED方式とはどのような仕組みなのか」「どのような部品や製造工程に向いているのか」など、導入前に確認したい点も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、金属積層造形におけるDED方式の仕組みや種類、代表的な活用例について解説します。DED方式の特徴やメリットも紹介するので、金属部品の試作、補修、大型造形を検討している方はぜひ参考にしてください。
DED方式とは
DED方式とは、金属積層造形に用いられる造形方式の一つです。DEDは「Directed Energy Deposition」の略称で、日本語では「指向性エネルギー堆積法」と呼ばれます。集束した熱エネルギーを用いて金属材料を溶融し、必要な箇所へ付加しながら立体形状を作る技術です。
一般的なDED方式では、レーザーやアーク、電子ビームなどを熱源として使用します。そこへ金属粉末または金属ワイヤーを供給し、溶融池を形成しながら材料を積み重ねていく仕組みです。金属を層ごとに積層して形状を作る点では他の金属積層造形方式と共通していますが、材料を直接供給しながら造形できる点が大きな特徴です。また、PBFの様に造形部に平面を必要とせず、5軸加工機やロボットアームを併用すれば曲面への造形が可能となります。
その他、DED方式は、粉末を敷き詰めて造形するPBF方式と比べて、比較的大きな部品を造形しやすく、材料を高速に付加できる傾向があります。また、新品の部品を造形するだけでなく、摩耗や欠損が生じた既存部品へ金属を肉盛りし、補修する用途にも活用されています。
例えば、金型の摩耗部分や欠損したエッジ部分へ必要な材料だけを付加し、その後に切削加工で仕上げる方法があります。部品全体を新たに製作するのではなく、損傷した部分だけを補修できるため、納期短縮や材料使用量の削減を図ることが可能です。
さらに、DED方式では造形途中で材料供給を切り替えながら造形できる装置もあります。そのため、部品の一部に耐摩耗性や耐熱性に優れた材料を付加したり、複数の金属を組み合わせたりする用途にも対応が可能です。ただし、材料の組み合わせや造形条件によっては割れ、気孔、残留応力などへの配慮が必要になるため、材料特性や用途に応じた設計・条件設定が欠かせません。
DED方式の種類
DED方式は、主に使用する熱源や材料供給方法によって分類されます。代表的な方式には、レーザーと金属粉末を用いるDED-LB、アークと金属ワイヤーを用いるDED-Arcなどがあります。それぞれLENSやWAAMという名称で呼ばれることもありますが、いずれも製造メーカーの商標や論文中での呼称であり、正式な表現とはされていません。
なお、DEDの類似技術として併記されることがある、金属粉末を高速で噴射・堆積させるCSAMは、DEDとは異なり金属を溶融させずに粒子を結合させるキネティックスプレー系の技術であり、厳密にはDEDとは異なる方式となります。
| 種類 | 主な材料供給方法 | 主な特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| DED-LB | 金属粉末 | レーザーで粉末を溶融しながら造形する | 精密部品、金型補修、小ロット品 |
| DED-Arc | 金属ワイヤー | アーク熱源でワイヤーを溶融して造形する | 大型構造物、大型部品、肉盛り補修 |
ここでは、DED方式の代表例であるLENSとWAAMに加え、関連技術としてMPAの特徴も解説します。
DED-LB
レーザーを熱源として利用するDED方式です。ノズルから金属粉末を供給しながらレーザーを照射し、材料を溶融・堆積させて造形します。熱源が電子ビームの場合は、DED-EBとして表記されます。
DED-LBの別呼称として使用されているLENSは「Laser Engineered Net Shaping」の略称で、装置メーカーの商標名となるので、注意が必要となります。
DED-LBの特徴は、必要な箇所へ必要な材料を付加しやすい点で、付加する材料を造形途中で切り替えることで単一部品内で複数材質使用した造形が可能となります。例えば、母材には一般的な工具鋼を使用し、摩耗しやすい部分へ耐摩耗性に優れた材料を肉盛りするといった活用方法が考えられます。
ただ、表面粗さや形状・寸法精度の面ではPBFより劣るので、造形後の仕上げ加工はほぼ必須となります。
金型の補修や小ロット部品の製造では、既存部品を活かしながら必要な部分だけを造形できることがメリットです。一方で、レーザー出力や粉末供給量、走査速度などの条件によって品質が変化するため、安定した造形にはノウハウが求められます。
DED-Arc
DED-Arc方式は、金属ワイヤーをアーク放電によって溶融・積層する方式で、大型金属部品の造形に適しています。
WAAMは「Wire and Arc Additive Manufacturing」の略称で、DED-Arc方式の呼称としてよく使用されておりますが、正式にはDED-Arcが正しい表現となります。DED-Arcでは、一般的な溶接で使われている金属ワイヤーを材料として用います。そのため、使用可能な材料の幅が広く、市場への流通量も多いので、粉末材料と比べて入手性もよく取り扱いもしやすい傾向にあります。また、アークを熱源に使うため、比較的高い付加速度を得やすく、大きな構造物や大型部品のニアネット造形に活用されています。
例えば、航空宇宙分野や船舶、エネルギー設備などでは、大型の金属部品を削り出しで製作すると、多くの材料ロスが発生することがあります。DED-Arcで必要な形状に近い状態まで造形し、最後に切削加工で仕上げることで、材料使用量や加工時間の削減を目指す取り組みが進められています。
一方で、DED-Arcは高い付加速度を得やすい反面、表面が粗くなりやすく、寸法精度や形状精度は仕上げ加工で補う必要があります。そのため、最終形状をそのまま造形するというより、DED技術を用いてラフに素材をつくり、後工程の切削加工で必要な精度を出すといったハイブリッドな製造方法として活用されるケースが一般的です。
CSAM
CSAMは「Cold Spray Additive Manufacturing」の略称であり、AMS規格内で定義されています。金属粉末を高速で噴射し、母材へ衝突させて堆積させる金属積層造形技術です。超音速堆積法やキネティックスプレーの一種として扱われ、DEDと同様に補修や肉盛り、部品製作へ活用されることがあります。別呼称として使用されているMPAは「Metal Powder Application」の略称で、こちらもメーカー商標となるので留意が必要となります。
一般的なレーザーDEDが金属を溶融・凝固させながら造形するのに対し、CSAMは材料を溶融させず、粒子の塑性変形を利用して結合させる点が大きな違いです。そのため、熱による変形、酸化、母材への熱影響を抑えたい場合に検討されることがあります。
一方で、対応できる材料や装置、求める形状精度によって適性は異なります。採用する際は、DED方式と同一の技術として捉えるのではなく、加工対象や求める品質に応じて比較・検討することが重要です。
DED方式の特徴・メリット
DED方式の大きな特徴は、高速造形、大型部品への対応、補修への活用、材料の使い分けといった点にあります。PBF方式などの金属積層造形と比較すると、得意とする領域が異なるため、目的に合った造形方式を選ぶことが重要です。
まず、DED方式は材料を直接供給しながら造形するため、比較的高い付加速度を得やすい傾向があります。特にWAAMのようにワイヤーを用いる方式は、大型構造物や大型部品の造形に適しており、短時間で材料を積み上げられます。
次に、既存部品への肉盛りや補修に対応できる点もメリットです。PBFの様に粉末床の中で部品を造形する方式では、肉盛りや補修を必要とする部分に平面が必要となるため、既存部品へ直接材料を付加することは容易ではありません。一方、DED方式は対象部品の必要箇所へ直接材料を供給できるため、金型や高価な機械部品の補修に活用しやすい特徴があります。
材料の選択肢や組み合わせの柔軟性もDED方式の強みです。粉末やワイヤーを供給しながら造形するため、装置構成によっては造形途中で材料を切り替えることもできます。これにより、耐摩耗性、耐熱性、熱伝導性など、部位ごとに求められる性能に合わせた材料設計を検討できます。母材と表面層で異なる材料を使い分けるほか、組成を連続的に変化させる傾斜機能材料の研究・活用も、DED方式の特徴を生かせる分野です。
DED方式の活用例
DED方式は、新規部品の造形だけでなく、既存部品欠損部の補修、表面コーティング等の機能付加など、幅広い場面で利用されています。特に「必要な場所へ必要な量だけ金属を付加できる」という特性は、従来の切削加工や溶接だけでは対応しにくい課題の解決に役立ちます。
代表的な活用例の一つが、金型の補修です。金型は繰り返し使用する中で、摩耗、欠け、割れ、表面の劣化などが発生することがあります。損傷箇所が限定的であれば、金型全体を作り直すのではなく、DED方式で摩耗部や欠損部へ金属を肉盛りし、切削や研磨で仕上げる方法が有効です。
また、金型の一部だけに異なる材料を付加する用途もあります。例えば、摩耗しやすいエッジ部へ耐摩耗性に優れた材料を肉盛りしたり、熱の影響を受けやすい部位へ耐熱性を考慮した材料を用いたりすることで、金型の寿命や性能向上を図ることが可能です。
その他、航空宇宙、自動車、エネルギー関連の分野では、大型部品や高価な部品の補修にもDED方式が活用されています。タービンブレード、シャフト、ハウジングなどは、部分的な摩耗や損傷であっても部品全体を交換すると大きなコストがかかる場合があります。DED方式を利用して必要箇所を補修できれば、部品寿命の延長や交換コストの抑制につながります。
新規部品の製造では、ニアネット造形も重要な活用方法です。ニアネット造形とは、完成形状に近い状態まで材料を付加し、その後に切削加工で高精度に仕上げる考え方です。特に大型部品や高価な材料を用いる部品では、塊状の材料から大きく削り出すよりも、材料ロスを抑えられる可能性があります。
一方で、DED方式には注意すべき点もあります。方式や装置にもよりますが、PBF方式と比べて表面粗さや寸法精度で劣る場合があり、切削、研削、研磨などの後加工を前提にするケースが少なくありません。また、溶融池の状態や熱履歴が品質に影響するため、割れ、ひずみ、気孔、酸化などを抑えるための条件管理が求められます。
そのため、DED方式は「積層造形だけで完成品を作る技術」として捉えるよりも、「造形、補修、肉盛り、切削加工を組み合わせて最適な製造工程を構築する技術」と考えると、活用の可能性を理解しやすくなります。
まとめ
DED方式とは、レーザーやアークなどの熱エネルギーを用いて金属材料を付加し、立体形状を造形する金属積層造形技術です。新規部品の造形に加え、金型や機械部品の補修、肉盛り、大型部品のニアネット造形など、幅広い用途で活用されています。
DED方式には、レーザーを用いるDED-LB、ワイヤーとアークを利用するDED-Arcなどがあります。関連技術として、金属を溶融させずに堆積させるCSAMもありますが、厳密にはDED方式とは異なる技術です。方式ごとに造形速度や精度、対応可能なサイズ、後加工の必要性が異なるため、部品の用途や求める性能に応じて選定することが重要です。
特にDED方式は、造形だけで完成する技術というより、切削加工や熱処理、HIP、接合、検査などを組み合わせることで、より高い品質や性能を目指せる技術といえます。そのため、材料や形状だけでなく、使用環境、必要な精度、補修か新規製作かといった条件を整理したうえで、最適な製造工程を検討する必要があります。
金属技研株式会社では、電子ビームやファイバーレーザーを活用した金属積層造形に加え、HIP、熱処理、ろう付・拡散接合・溶接、機械加工、検査・解析など、金属部品の製作に関わる幅広い技術を提供しています。
大型造形や肉盛り補修にはDED方式が適していますが、精密な複雑形状の造形や部品一体化には、金属技研が強みを持つPBF方式(SLM方式・EBM方式)が最適です。自社の製品にどの工法が適しているかの選定や、造形後の熱処理・HIP・機械加工まで含めた一貫対応について検討されている方は、金属技研株式会社へお気軽にご相談ください。